歌わなくても、アカペラは楽しめる

King of Tiny Room インタビュー

取材に応じるKing of Tiny RoomのCTO・吉田圭佑
取材に応じるKing of Tiny RoomのCTO・吉田圭佑

  アカペラを取り巻く環境は激変を続けている。以前はライブ会場やストリートに限られていた発表の場は、通信技術の発達やSNSの登場によって多様化した。2020年から続くコロナ禍は変化を加速させ、いまやアカペラ奏者は、同じ場所にメンバーが集まらずとも、インターネット通信だけでクオリティの高い作品を生み出せるようになっている。(※1)

 

 このような中、ひときわ存在感を放っているのがオンラインアカペラサークルのACAPPELLER.JP(以下、AJP)。約60人がメンバーとして加入し、ウェブを介してコミュニケーションをとりながら、積極的な活動を行っている。

 

 AJPのメンバーらが生みだすコンテンツは、演奏作品に限らない。例えば、アカペラ文化のキーマンへの取材を通してその歴史を紡ぎ出す「ハモヒス」や、さまざまなアカペラグループのオリジナル楽曲を募って編集し、コンピレーションアルバムとして音源化する「A CAPPELLA ORIGINALS SELECTION 」など多様である。AJPを特徴づけるのは、歌わなくても活躍できる環境があることだ。

 

 当サイトでは今回、AJPを運営するアカペラ専門の企業「King of Tiny Room」(キングオブタイニールーム、以下KTR)に取材を行った。インタビューに応じたのは、CTOの吉田圭佑である。

 

 同社はAJPのようなコミュニティづくりのほか、アカペラの楽譜アレンジ、アカペラを通した教育環境の整備といった事業を行っている。掲げるスローガンは、ずばり「アカペラしやすい環境づくり」だ。

 

 KTRが生まれる背景にあるのは、吉田と、代表の齋藤龍が福島大学アカペラサークルで活動していた頃に感じていた「地域格差」である。「都会と地方の格差を無くし、アカペラ環境をもっと良くしたい」というかれらの思いを知ることは、インターネット時代のアカペラ文化、ひいてはボイスパーカッション文化の将来を見通す上で、きわめて重要であると考える。

 

インタビュー:2021年11月

※1…コロナ禍は記事作成時の2022年2月時点でも続いており、変異株のひとつ「オミクロン株」によって感染者数が過去最多を連日更新している。ライブやコンサートは中止、もしくは入場制限が行われ、いずれの会場でも、以前の規模での開催はできていない状況だ。他方、YouTubeやTwitter、Tik Tokなどでの発信は隆盛を極めており、アカペラに限らず多くのアーティストが「SNSでバズる」ことを目的とした表現方法を探求し続けている。