セッションでつながる縁

BAR Voices店主・ボイスパーカッショニスト 小野アヤトインタビュー

 アイスピックで割った氷に、注がれるアルコール。あざやかな手つきで作られた酒が提供されると、カウンターには笑顔が広がる。フロアの奥に設けられたステージに目を向けると、ギタリストとベーシストが即興のセッションをはじめようとしていた。すると先程までメジャー・カップを操っていたバーテンダーがマイクを持ち、切れ味鋭いドラム音を、声と息で奏ではじめる。店内はたちまちエモーショナルなファンクに包まれる。

 

 ギターやベースの演奏に、彩りとノリを与えるそのボイスパーカッションの技術は一流だ。 これは、恵比寿にある「BAR Voices」(バー・ヴォイセス)における日常的な一幕である。

 

 バーテンダーの名は小野アヤト。2001年当時、こすへらすというアカペラグループで「ハモネプ」に出場し、2003年からはアカペラグループChuChuChuFamily(チュチュチュファミリー)のメンバーとして活躍。2016年以降はボイパ・ピアノ・ボーカルからなるTrio Chacua'(トリオ ・チャクア)で活動を行う、プロボイスパーカッション演奏者である。

 

 小野が持つ明るい人柄と、おしゃれであたたかな店内の雰囲気、そして確かなボイパの技術を求め、この店にはジャンルを超えた多くのミュージシャンが日夜集い、初対面どうしが気軽なセッションを楽しんでいる。そこにはたしかに「ボイパを介したコミュニケーション」が生まれていた。

 

 当サイトはボイパがもつさまざまな可能性を探るための取り組みである。そのなかで小野アヤトの生き方はどうしても紹介しなければならない。

 

 小野は「ハモネプ」に出演する以前、関西地方でいち早くボイパを習得し、そのスキルを活かして各大学のアカペラサークル設立に貢献した重要人物である。そんな人物が現在、バーの経営とプロボイスパーカッション奏者としての活動を両立している。なぜこのふたつが両立されなければならなかったのか。その理由を聞くことはすなわちボイパがもつ可能性を探ることにつながると考えた。

 

 インタビューはBAR Voicesで実施。この日はセッションライブが行われる日で、店内にはプロの音楽アーティストらが集っていた。